多くの企業が一度は検討したことがあるであろう「海外進出」。国内市場の成熟や人口減少、新興国の成長といった背景を受け、海外市場はもはや選択肢ではなく「検討すべき前提」として語られるようになってきました。しかし実際に、いざ海外展開を進めようとした際に、「何から手をつければよいのか分からない」「本当にこの判断は正しいのか」といった壁に直面する企業も少なくありません。本記事では、多くの企業が最初につまずく「初期設計」に焦点を当て、海外進出を現実的に前に進めるための考え方を整理していきます。
目次
海外進出に対する市場環境
日本企業の海外進出の状況
日本企業の海外事業は、すでに経営構造の一部になっている。日本企業の海外事業は、もはや補助的な取り組みではない。経済産業省の「海外事業活動基本調査」によれば、日本企業の海外子会社数は 25,325社、海外拠点で働く従業員数は 約569万人 に達している。これら海外子会社の売上高合計は 約303兆円、当期純利益も 14兆円超 とされ、海外市場はすでに国内市場と並ぶ規模感を持つまでに拡大している。特筆すべき点は、海外事業の広がりが製造業だけで構成されていないことだ。同調査では、海外子会社のうち 非製造業が約14,000社 と過半を占めており、IT・情報通信、卸売・小売、サービス、ヘルスケアなど、業種横断で海外事業が進展している実態が確認できる。海外進出は、特定の業界に限られた話ではなく、多くの企業にとって現実の事業活動の一部になっている。
日本企業の海外進出の難易度
海外進出は、依然として難易度の高い取り組みと言われている。海外事業が広がる一方で、その難易度が下がったわけではない。海外赴任・海外事業に関する長年の調査では、失敗率が約40%前後で推移しているとされている。さらに、グローバル展開全体で見ると、当初想定した成果を十分に得られていないケースが多数派という分析も存在する。 [envestnet.com] [firmex.com] 重要なのは、こうした失敗が特定の業種や企業規模に偏っていない点だ。IT企業であっても、サービス業であってもBtoB・BtoCを問わず、同様の課題が発生している。海外進出の成否を分けているのは「業種」ではなく、進め方そのものだと言える。
日本企業の海外進出支援の特徴
従来、日本企業の海外進出は、自社完結型のモデルを前提としてきた。現地法人を設立し、自社人材を派遣し、フルオペレーションを構築する方法は、統制が取りやすい反面、初期投資が大きく、修正や撤退が難しいという課題を抱えている。特に近年は、為替、地政学、規制環境などの変動が速く、「数年前の前提が通用しなくなる」ケースも珍しくない。その中で、最初からすべてを自社で抱える進め方は、業種を問わずリスクの高い選択になりつつある。
日本企業の海外進出成功率
JBIC(国際協力銀行)の調査によれば、日本企業の 海外売上比率は約41% に達している一方、企業の関心は単なる拠点拡大から リスク管理や柔軟な関与の設計 へと移行している。 [github.com]
これは、海外進出を控えているというよりも、進め方をより精緻に設計しようとする動きと捉えるべきだろう。成功している事例と、うまくいっていない事例との差は、市場選定よりも、関与の仕方と体制設計にあることが多い。
海外進出の方法
海外との関わり方は、拠点設立だけではない
JETROの調査を見ると、海外進出の形は一様ではない。海外に物理的な拠点を持たず、輸出、越境取引、デジタルサービス提供、業務連携といった形で海外市場と関わる企業も数多く存在する。実際、JETROの「海外進出日本企業実態調査」によれば、米国向けに直接輸出を行っている企業は 全体の30%未満 にとどまり、多くの企業が段階的・限定的な形で海外市場との接点を持っていることが示されている。[efinancial…areers.com]。このことは、海外進出が「出ているか/出ていないか」という二択ではなく、関与度が連続的に存在するプロセスへと変化していることを示している。
海外進出を「実行」ではなく「設計」の問題として捉え直す
こうした背景を踏まえると、海外進出は実行力の勝負ではなく、設計力の勝負だと分かる。自社は海外でどの領域に価値を出すのか。どこまでを自社が担い、どこからを外部と連携するのか。投資額、リスク、責任範囲をどの水準に設定するのか。これらを事前に整理することで、海外進出は「勢い」ではなく、調整可能で可逆性のあるプロセスへと変わる。
エコシステム型海外進出という現実的なアプローチ
この設計思考を前提とした進め方が、エコシステム型海外進出である。エコシステム型とは、海外進出を一社で完結させるのではなく、事業設計、現地ネットワーク、法務・会計、人材、オペレーションといった機能を、それぞれ専門性を持つプレイヤーと組み合わせて進める考え方を指す。国際ビジネス研究においても、企業がエコシステムとして海外市場に関与することで、未知の市場に伴うリスク(liability of foreignness)を軽減し、現地適応のスピードを高められることが示されている。[efinancial…areers.com]
ササエルの支援内容
海外進出支援におけるササエルの立ち位置
ササエルは、日本企業の海外進出を、業種横断・エコシステム前提で支援している。特徴は、海外進出を前提に議論を始めない点にある。出発点は、「海外に出るかどうか」ではなく、**「海外とどう関わることが合理的か」**という整理である。そのうえで、国内外の専門家や企業と連携しながら、企業ごとに適した海外進出の方法を設計する。SASAL自身がすべてを実行するのではなく、エコシステムを組み立て、機能させることに注力している。
無料で参加できるエコシステムという入口
ササエルが運営するエコシステムは、無料で登録・参加することができる。海外進出を検討している企業や、国際ビジネスに関わる専門家が、情報収集や関係構築の場として活用できる設計になっている。いきなり支援を依頼する必要はなく、検討段階から関われることが、このエコシステムの特徴だ。かつ、現地でビジネスを実施する力をつけて頂くことを目的としているため、基本的に各地のローカル言語の対応は行わず英語を主体とした取り組みを推進している。これにより、支援企業を介してのみしか、進出の足がかりがないという依存状況を脱却するように設計してある。
海外進出は「勢い」ではなく「設計」で決まる
海外進出に万能な方法は存在しない。しかし、業種を問わず共通して言えるのは、準備と設計の質が結果を大きく左右するという点である。どの国に進出するか以上に、どの方法で、誰と、どのように海外と関わるか。その問いに向き合うことこそが、これからの海外進出の出発点になる。



